1 はじめに

 離婚に関する争いは、慰謝料・財産分与・親権・面会交流・養育費・婚姻費用等多岐にわたります。

 また、証拠の収集や離婚後の生活設計等を考えておかなければ、離婚問題をスムーズに解決することはできません。

 そのため、離婚を考え始めた時点で、(委任をするかはさておき)一度弁護士へ相談することをおすすめします。

※※※弁護士の倫理上、利益相反となることを回避するために、先にお相手からの相談を受けている場合には、残念ながらご相談をお受けすることができません。また、双方から相談を受けていたことが判明した場合には、双方ともご依頼を受けることを差し控えさせていただいておりますので、予めご了承ください。※※※

2 慰謝料

 不貞行為(≒浮気)によって離婚をする場合の慰謝料は、100万円~200万円と言われています。

 従来は、100万円~300万円程度であるとも言われていましたが、近年は減少傾向にあります。

 不貞行為の期間、婚姻期間、幼い子どもの有無、不貞行為の態様等から総合的に判断して金額を決めることになります。

 DVやモラハラの場合については,ケースバイケースです。身体的な暴力や性的な暴力がひどい場合には、不貞行為の慰謝料よりも高くなることもあります。

 他方、性格の不一致などの場合は、慰謝料の請求自体ができないこともありますし、請求ができるとしても不貞行為の場合よりも安い傾向にあります。

相手が浮気を認めない場合は?

 相手が浮気を認めない場合を予測して、離婚を切り出す前に証拠を集めておきましょう。
 証拠としては、写真、録音・録画データ、LINEのスクリーンショットなどが考えられます。
 また、相手が浮気を認めた場合は、そのことを書面化しておくことも大事です。
 一度浮気を認めていた人が後から浮気を否定することもあるので証拠を確保するまで安心してはいけません。

DVやモラハラの証拠はどういうものがある?

 写真、録音・録画データなどは重要です。
 ケガをさせられた場合には、早期に病院で治療を受けてください。その際には、ケガの写真を撮っておくとともに、医師にどういう経緯でケガをしたのかを説明しておくとよいです。
 その他、LINEのやりとりを保存しておくことも大事です。

3 財産分与

 夫婦で共同で蓄積した財産については、離婚時に夫婦に分け合うことになります。

 原則として、夫婦が同居している期間に形成した財産が財産分与の対象になるので、別居している場合には、別居時の財産状況をもとに財産分与をすることになります。

 財産分与において特に問題となるのは、相手が財産の開示をしてくれない場合や、マイホームの処理についてです。

 強制的に財産の開示をさせることは難しい場合がありますので、離婚を考え始めたことから、相手の財産状況を調査し、証拠化することをおすすめします。

 マイホームについては、ローンの残高が不動産の価値を上回っているかどうかがポイントになります。また、離婚後、マイホームに夫婦の一方が住み続けるのか、それとも売却をしてしまうのかについてもあらかじめ検討しておく必要があります。

 

財産の調査?

 財産分与は資料で確認できる財産をわけるという方向で話が進みます。そのため、財産の存在を隠されてしまうと非常に困ってしまいます。
 そこで、離婚をお考えになったら、別居をする前に相手の財産状況を調査することをおすすめします。

マイホームの処分方法?

 マイホームの残ローン金額が不動産の価値を下回っている場合には、プラスの財産として財産分与をすることになります。
 この場合は、誰がマイホームに住み続けるのか、それとも売却してその売却益を分配するのか等を決めることになります。

 他方、マイホームの残ローン金額が不動産の価値を上回っている場合(いわゆるオーバーローン)は、厳密にはマイホームは財産分与の対象にはなりません。もっとも、マイホームの問題を放置していては離婚問題の解決はできなくなるので、マイホームの処理についても離婚問題と併せて解決することになることが多いと思います。
 そして、マイホームを売却するか夫婦のどちらかが住み続けるのか、その場合に残ローンを誰が支払うか、などを検討します。なお、他方の配偶者が連帯保証人となっている場合にこれを外してもらえるかどうか金融機関と交渉する必要があります。

4 親権・面会交流

 未成年者がいる夫婦が離婚をする場合には、その未成年者の親権者を夫婦のどちらにするのかを決めなければなりません。

 話し合いで親権者をどちらにするのかを決められない場合には、裁判所を介した手続きで決めることになります。

 この点、裁判所が重視するのは、どちらの配偶者に子の養育を任せる方が子にとって良いかという観点です。

 実際には、従前(別居前)と現在(別居後から現時点まで)の子の養育状況から判断されることが多いです。

 親権者でなくなった親については、子との面会交流を求めることができます。
 話し合いで面会交流の方法などがまとまらない場合には、裁判所を介した手続きで決めることになります。

 一般的には、月に1度、2時間程度の面会が実施されることが多いようです。もっとも、子の状況に鑑みて、回数や時間などが増減することがあります。

5 婚姻費用・養育費

 結婚している夫婦は、互いに婚姻から生ずる費用を分担する義務を負うことから(民法760条)、別居をした夫婦間においては、基本的には、稼ぎのある配偶者が他方の配偶者に対して、一定の金額を支払う義務を負います。
 これを婚姻費用といいます。

 そこで、実務上は、離婚を求める調停を申立てるのと同時に婚姻費用分担を求める調停も申立てることが多いです。

 離婚が成立した後は、夫婦ではなくなるので婚姻費用は発生しなくなります。

 もっとも、夫婦間に未成年の子がいた場合には、その子の養育費を請求することができます

 婚姻費用や養育費については、裁判所が定めた基準に基づいて算定することとなっておりますので、こちら(養育費・婚姻費用算定表)を参照してください。

 

相手が養育費を支払ってくれないのでは?

 養育費を支払わない人が非常に多いというのは近年社会問題となっています。
 相手が養育費の支払いをしてこない場合には、強制執行などによって回収を図る必要があります。詳しくはこちらをご参照ください。

浮気して出て行った相手にも婚姻費用を支払わないといけないの?

 別居に至った経緯が信義則に反するものである場合には、その配偶者についての婚姻費用の支払いを拒むことができることがあります。
 大阪高裁平成28年3月17日決定(判例タイムズ1433号)は、妻の不貞行為を認定した上で、その妻の夫に対する婚姻費用分担請求を信義則・権利濫用の見地から否定しました。なお、子の教育費相当分については支払義務を認めている点に注意が必要です。

6 よくあるご質問


 

パートナーと離婚をしたいのですが、離婚後の生活のことを考えるとなかなか決心がつきません。どうすれば良いのでしょうか。

具体的なシミュレーションをすると考えがまとまりやすいです。まずはご相談ください。

 もう相手と一緒に生活をするのが嫌だとおっしゃる方でも、離婚後の生活環境の変化から、離婚をためらう方は大勢いらっしゃいます。

 特に離婚を希望する方が専業主婦や給料の少ないパートのみをしているケースでは、相手から慰謝料・財産分与、養育費の支払いを受けられなければ、離婚後に生活することが困難となってしまうこともあります。

 当事務所では、今の段階で離婚に踏み切るべきかどうかについても、様々な事情を踏まえて、シミュレーションを行い、離婚後の生活がどうなるのかを一緒に考えます。

 最終的な結論がどのようなものになったとしても、ひとまず弁護士の見解を聞いておくことはとても有効だと思います。


弁護士に相談するタイミングはいつがいいのでしょうか?

できるだけ早い方がよいでしょう。別居前にご相談いただくととてもよいです。

 離婚問題においては、証拠を集めるにしても、相手と交渉を開始するにしても、早い段階で弁護士の意見を聞いておくことが重要です。

 離婚問題における証拠というのは浮気の証拠に限られません。DV事案であれば診断書等、財産分与を請求する場合には、相手の財産に関する資料等も必要になります。

 また、子供の親権などに関する争いが予想される場合には、別居のタイミング、方法等についても、慎重に検討する必要がございます。

 さらに、相手方に財産の管理を任せきりの場合や、すでに別居している場合には、相手方の財産状況が不明だったり、相手方が財産隠しなどの行動に出る場合もございますので、財産調査や預金等の仮差押などの手続きも検討する必要もあります。

 このように、手遅れになってしまわないように、証拠を確保したり適切なアドバイスを早期に受けるため、弁護士への相談はできる限りお早めにしていただくことが重要です。特に、証拠を探す(ご相談者様が浮気の決定的な証拠だと思っていたものが、様々な理由で裁判上では役に立たないものであったというケースはしばしばあります)。



7 男女問題についてのよくあるご質問

 

私は愛人です。相手のパートナーから慰謝料の請求をされていて困っています。

支払う必要がない場合や相手の言い値を支払う必要がないことがあります。

 既婚者と性的な関係を持った場合には、あなたもそのパートナーに対して慰謝料を支払わなければならないのが原則です。

 もっとも、相手が既婚者であることを全く知らずかつ知ることもできないような場合では、慰謝料を支払う必要はありません。

 また、愛人に対して請求できる金額は,不貞慰謝料の半分以下となることが多いため、相手のパートナーの言い値の金額を支払う必要がないことも多いです。

 こうした主張をするのは、証拠や諸事情を踏まえた専門的な判断が必要となりますので、早急に弁護士への相談をすることをおすすめします。